ジオイドと楕円体の違い(地球の3つの形状面)
初心者向け解説:なぜ地球はジャガイモ形と呼ばれるのか?
「海抜何メートルですか?」という問いは、測地学と物理学において非常に奥深いテーマです。測量やGNSS測位では、地球の形状を把握するために以下の3つの「面」を使い分けています。
- 地表面(地形 / Topography): 私たちが実際に歩き、目で見ることができる山、谷、海岸線などの物理的な地面。
- 地球楕円体(数学的モデル / Ellipsoid): GPS衛星が位置計算のために使用する、滑らかで幾何学的な回転楕円体(例:WGS84、GRS80)。
- ジオイド(物理的重力面 / Geoid): 地球の重力ポテンシャルが等しい面(等重力ポテンシャル面)で、潮汐や風がない場合の平均海面を陸地にまで延長したもの。
基本公式:H(標高・海抜高度) = h(GPS楕円体高) - N(ジオイド高)
海辺の砂浜でスマートフォンのGPS高度計を見ると「標高 -35m」などのマイナス値が表示されることがあります。これはGPSが故障しているのではなく、GPSが平均海面(ジオイド)ではなく仮想的な楕円体を基準に高さを測定しているためです。
1. 地球楕円体:衛星が軌道計算に用いる滑らかな幾何学面
GPS/GNSS衛星は宇宙空間を高速で周回しています。衛星が地上受信機の3次元位置を計算するには、基準となる地球モデルが単純かつ滑らかな数式で表現されている必要があります。自転の遠心力で赤道半径が極半径より約21km長いため、扁平な「回転楕円体(Ellipsoid)」が定義されました。
現在広く利用されているのはWGS84楕円体およびGRS80楕円体です。生データとしてのGNSS測位結果は、この楕円体面から測った垂直距離である楕円体高(h)として出力されます。
2. ジオイド:重力に従う真の「平均海面」
地球内部のマントルの密度や山脈・海洋の質量は一様ではありません。質量の大きいヒマラヤ山脈の周辺では海水が引き寄せられて海面が盛り上がり、水深の深い海溝付近では海面が落ち込みます。風や潮汐の影響を取り除いた海面は、完全に幾何学的な楕円体ではなく、凸凹に波打っています。
この等重力ポテンシャル面をジオイド(Geoid)と呼び、一般に言われる「平均海面(Mean Sea Level: MSL)」の正体です。土木工事で水路や排水管を設計する際、水は幾何学面ではなく重力に従って流れます。そのため、土木・測量分野ではジオイド面を基準とする標高(正高: H)が不可欠です。
3. ジオイド高(N)と日本の水準基準
地球楕円体面からジオイド面までの垂直距離をジオイド高(Geoid Undulation: N)と呼びます。世界全体ではジオイド高はマイナス107mからプラス85m程度まで変動します。日本列島周辺では、楕円体に対してジオイドが約30m〜45m高い位置に存在します。
測量現場における標高換算の仕組み
現代の高精度GNSS測量(RTK-GNSS等)では、受信機がまず高精度な楕円体高(h)を測定します。その後、データコレクタ端末内のジオイドモデル(日本の場合は国土地理院GSIGEO2011、国際的にはEGM2008など)を参照して該当緯度経度のジオイド高(N)を自動照会し、引き算を行うことで「日本の東京湾平均海面(T.P.)基準の標高(H)」を算出しています。